s-yfonts パッケージの使用法
s-yfonts パッケージは本田知亮様が作成されました [2001.07.09.]。また、「掲示板 TeX Q & A」でいつも色々教えてくださる多くの TeXnician の方々にも記して感謝します。
Copyright © Yoshi Nagata
Created: July 11, 2001
Updated:
August 16, 2006
Comment to:
- 目次
-
- s-yfonts パッケージの特徴
- s-yfonts パッケージのインストール法
- yfonts vs. s-yfonts
- yfonts パッケージ使用における入力ファイル例
- s-yfonts パッケージ使用における入力ファイル例
- 出力ファイル
- 付録:Haralambous 作ドイツ旧字体フォント及び yfonts パッケージについて
1 s-yfonts パッケージの特徴
s-yfonts パッケージは、これまでドイツ旧字体処理用パッケージ yfonts を使用する際「語中の長い s は s 、語末の丸い s は s: 」というようにいちいち入力し分けなくてはならなかった作業を、「双方とも単なる s 入力で OK 」としてくれる便利なものです。ただし、s-yfonts は「合成語」における区切り部分に含まれる s までは自動処理してくれません。従って、合成語内の丸い s についてはこれまで通り s: と入力してください。なお、お気づきの点がございましたら、ynagata@fukuoka-u.ac.jp までご連絡ください。プログラム等技術上の問題については、私の方から本田さんへもレポートさせて戴きます。
2 s-yfonts パッケージのインストール法
- まず、こちらから s-yfonts.lzh ファイルをダウンロードし、適当な作業ディレクトリで展開します。
- 次に、上記ファイルを展開して生成された /s-yfonts/tfm/ ディレクトリの名前を s-yfonts と変更し、これをディレクトリ毎 /texmf/tex/fonts/tfm/ 内に移動させます。
- 同じように、展開して生成された /s-yfonts/vf/ ディレクトリの名前を s-yfonts と変更し、これもディレクトリ毎 /texmf/tex/fonts/vf/ 内に移動させます。
- 残りの /s-yfonts/ はそのまま 例えば /texmf/tex/latex/ ディレクトリに移動させます。これでインストールは完了です。後は、/texmf/tex/latex/s-yfonts/sty/ 内にある s-yfonts.dtx を platex にかけてドキュメントをお読みください。また、/texmf/tex/latex/s-yfonts/sample/ 内には grimm.* といったサンプルファイルも置いてあります。必要に応じてこちらも参照してください。
3 yfonts vs. s-yfonts
それでは、yfonts パッケージ及び s-yfonts パッケージ使用における入力ファイル例を対照させて掲げておきます。双方を比較することで、その入力法の異同をご覧ください。
3-1 yfonts パッケージ使用における入力ファイル例
語末の s 、及び合成語区切りの s は丸い s 出力用に s: という入力となっていることに注意。
\documentclass[a5paper]{article}
\usepackage{german}
\usepackage{yfonts}
%\usepakcage[varumlaut]{yfonts} % 小添字 e 式ウムラウトの場合は上の代わり
% にこちらを使用
\begin{document}
\Large
\frakfamily
\fraklines
\yinipar{I}n den alten Zeiten wo das: W"unschen noch
geholfen hat, lebte ein K"onig, dessen T"ochter waren alle
sch"on, aber die j"ungste war so sch"on, dasz die Sonne
selber, die doch so vieles: gesehen hat, sich verwunderte,
sooft sie ihr ins: Gesicht schien. Nahe bei dem Schlosse
des: K"onigs: lag ein groszer dunkler Wald, und in dem
Walde unter einer alten Linde war ein Brunnen; wenn nun
der Tag recht heisz war, so ging das: K"onigs:kind hinaus:
in den Wald und setzte sich an den Rand des: k"uhlen
Brunnens:; und wenn sie Langeweile hatte, so nahm sie eine
goldene Kugel, warf sie in die H"ohe und fing sie wieder;
und das: war ihr liebstes: Spielwerk.
\end{document}
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3-2 s-yfonts パッケージ使用における入力ファイル例
合成語区切りの s: 以外は全て単なる s という入力となっている点に注意。
\documentclass[a5paper]{article}
\usepackage{german}
\usepackage{s-yfonts}
%\usepakcage[varumlaut]{s-yfonts} % 小添字 e 式ウムラウトの場合は上の代わり
% にこちらを使用
\begin{document}
\Large
\frakfamily
\fraklines
\yinipar{I}n den alten Zeiten wo das W"unschen noch
geholfen hat, lebte ein K"onig, dessen T"ochter waren alle
sch"on, aber die j"ungste war so sch"on, dasz die Sonne
selber, die doch so vieles gesehen hat, sich verwunderte,
sooft sie ihr ins Gesicht schien. Nahe bei dem Schlosse
des K"onigs lag ein groszer dunkler Wald, und in dem
Walde unter einer alten Linde war ein Brunnen; wenn nun
der Tag recht heisz war, so ging das K"onigs:kind hinaus
in den Wald und setzte sich an den Rand des k"uhlen
Brunnens; und wenn sie Langeweile hatte, so nahm sie eine
goldene Kugel, warf sie in die H"ohe und fing sie wieder;
und das war ihr liebstes Spielwerk.
\end{document}
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3-3 出力ファイル
上記二つの入力ファイルを LaTeX にかけると、双方とも全く同じ次の出力が得られます。長い s 、丸い s とも赤色にマーキングしてあります(ss, st, sz という合字部分はセットで色付けされています)。

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4 付録:Haralambous 作ドイツ旧字体フォント及び yfonts パッケージについて
最後に、Haralambous の作ったドイツ旧字体 (gebrochene Schriften) フォント 3 種、つまり、ゴシック体 (ygoth) ・シュヴァーバッハ体 (yswab) ・フラクトゥア体 (yfrak) について以下に簡単にまとめておきます。参考にしてください。
なお、以下に掲げる入力法は、いずれも yfonts または s-yfonts パッケージの使用を前提としています。Haralambous のドイツ旧字体を取り扱うもう一つ別のパッケージ oldgerm パッケージ (Frank Mittelbach 作) では、入力法がこれらとはほんの少々異なってきますので注意してください。なお、s-yfonts や yfonts パッケージ (Walter Schmidt 作) の方が Babel や german パッケージと併用できるという点で、使い勝手が良いといえます。
- [3 種全てのフォントに共通する点]
いずれもその基本字母は、大文字 25 字、小文字 27 字から成る。小文字が 2 つ多いのは、「 i と j 」及び「長い s と丸い s 」の区別があるため。また、Haralambous は「時代考証」を正確に反映させているので、大文字のウムラウト記号は存在しない (大文字のウムラウトは Ae Oe Ue のように大文字の後に e を送るのが当時の正書法)。
- [ゴシック体]
- 現存するゴシック体の一番古い文献は、西ゴート族の僧ウルフィラ (Ulfila, Wulfila とも.「小オオカミ」の意) がゴート人達に宣教するためにギリシア語からゴート語に翻訳した「旧約・新約聖書」の手写本 (500 年頃. 緋色の羊皮紙に大部分が「銀」文字, 一部は金文字, で記されているため「銀字写本 Codex Argenteus」と呼ばれる. スウェーデンのウプサラ大学図書館蔵) で、ここで用いられている字体は「初期ゴシック体」と呼ばれる。この後ゴシック体は、歴史の流れの中で色々と変化していった。
- Haralambous が再現したゴシック体小文字は、有名な例の「グーテンベルクの42行聖書」から採られた。
- 大文字は、また別の 15 世紀の資料から採られた。
- 基本字母の他、点なし i, j もある。それぞれ \i, \j と入力する。
- ae ba be bo ch ck ct da de do ha he ho ff fi fl ffi ffl ij ll oe pa pe po pp qq qz ss ssi st sz tz va ve vu の 35 個の合字を持つ。
- ss ssi st には別の合字ヴァリエーションがあり、それぞれ \symbol{42} \symbol{47} \symbol{61} と入力する。なお、合成語等において合字を回避したい場合には、\/ を挿入する。この一般コマンドはシュヴァーバッハ・フラクトゥア体でも同様。
- sz (いわゆるエスツェット) は "s や \ss 等で入力してもよい。
- ウムラウト (um は「回る・変わる」の意, Laut は「音」の意, 英語の loud と語源が同じ, ウムラウトは従って「変音」の意) は "a \"a \"{a} といういずれの入力でもよい。
- ゴシック体は通常その書体「単独」で使用される。
- [シュヴァーバッハ体]
- ドイツのニュルンベルク・ウルム・アウクスブルク・マインツといった都市では、15 世紀の終わり頃から「シュヴァーバッハ体」と呼ばれる、ゴシック体から発達してきた字体が現れてきた。ニュルンベルク近郊の町「シュヴァーバッハ」がこの名称の起源とされるが、検証はされていないそうである。全体的に幾分丸みを帯びたこの字体は、力強く「民衆風」であるとされる。
- シュヴァーバッハ体には基本字母の他、点なし i, j もある。それぞれ \i, \j と入力する。また、「パラグラフ」を表す字体も用意されている。これは \symbol{60} と入力する。
- ch ck ff sf ss st sz という 7 つの合字を持つ。
- sz (いわゆるエスツェット) は "s や \ss 等で入力してもよい。
- ウムラウトは二つの点を添える通常見慣れた表記法の他に、小さな e を上に添える形式のものもある。前者は "a \"a \"{a} と入力するが、後者は *a のように入力する。
- [フラクトゥア体]
- 名称はラテン語の fractura (break の意) から。民衆風のシュヴァーバッハ体は、当時、美的観点から「少々野暮かつ単純」と見なされていたらしい。これと併行して、16 世紀はじめ頃から、丸みが少なく文字幅の狭いフラクトゥア体と呼ばれるものが発達してくるようになる。フラクトゥア体の大文字の多くはいわゆる「象鼻 Elefantenrüssel」で飾られる。書籍印刷用の最初のフラクトゥア体は 1513 年、Schönsperger によってアウクスブルクで創案され、これを完成させたのが 18 世紀の活字彫刻師ブライトコプフであるとされる (ブライトコプフは楽譜出版でも有名)。Haralambous がフラクトゥア体のモデルとしたのは、このブライトコプフのフラクトゥアである。
- シュヴァーバッハ体の持つ 7 つの合字 ch ck ff sf ss st sz に加えて tz という合字も持つ。
- 大文字 J を I から区別する必要のある場合に備え、専用の大文字 J も用意されている。\symbol{36} と入力する。ただし、これは一般的に認知されていた字体ではない。また、etc.(=et cetera) を表す記号も用意されている。これは \etc あるいは \symbol{201} と入力する。ただし、この記号もフラクトゥア体出現の初期のみに使われていたものである。なお、etc. のようなラテン語出自の語は、本来「ラテン活字体」で組むのが正書法。
- フラクトゥア体とシュヴァーバッハ体は「組み合わせて用いる」ことも可能。その際、フラクトゥア体は「地の文」、シュヴァーバッハ体は「強調部分やタイトル」に用いられる。
- [引用符号について]
上記いずれの字体においても、``...'' と入力してやると、「ドイツ式」の引用符号が出力されるようになっている。なお、この引用符号はラテン活字体のそれであるが、これは間違いではないそうである。Haralambous がモデルとしたのは Breitkopf のフラクトゥア体であったことは既に述べたが、この字体では引用符号としてラテン活字体をそのまま用いていたためである。例えば、フラクトゥア体のコンマを二つ重ねるような引用符号は後世の産物であるという。なお、いずれの字体においても、行末で分綴される場合は、専用のハイフン記号が自動出力される。
- [行送りについて]
yfonts の各字体を組む場合、LaTeX におけるデフォルトのラテン活字体用の行送りではバランスが悪い。これを自動修正するコマンドが \fraklines である。なお、\fraklines は、文書の途中でフォントサイズを変えた場合は、その都度これを記してやる必要がある。
- [イニシャル体について]
yfonts は美しいイニシャル体も持っており、これをいわゆる「ドロップキャップ」として用いるには、\yinipar{I} としてやればよい。\yinipar は自動的に 4 行取りでイニシャルを段落始めに埋め込んでくれる。この際、同時に \fraklines を用いないと、本文とイニシャル体の上部ラインが揃わないので注意。
- [varumlaut オプションについて]
"a といった入力のままで、*a 用の出力を得たい場合はオプション varumlaut を用いる。\usepackage[varumlaut]{yfonts} としてやればよい。
- [yfonts フォント用サンプルファイル]
上記解説を一まとめにして yfonts における「入・出力」を比較対照できるようにしたのが次のファイルです。ダウンロードして latex でコンパイルしてみてください。gschrift.tex
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